歯周病
歯周病は、歯を支える歯肉や歯槽骨に生じる炎症のことを指します。主に歯垢や歯石に付着した細菌が原因で発生します。初期段階では「歯肉炎」と呼ばれる歯肉の炎症で、歯肉が赤く腫れたり、ブラッシング時に出血することがあります。放置すると、炎症は歯を支える骨にまで進行し、「歯周炎」と呼ばれる病状に進展します。 最終的には歯がグラグラになり、失われるリスクが高まります。
歯周病は、痛みや腫れなどのはっきりと症状が現れる頃には、すでに病気が進行していることが一般的です。30歳を超えると、約3人に2人が歯周病を患っており、これが歯を失う最も一般的な原因となっています。
歯槽骨が一度溶けてしまうと、通常は元の状態には戻りません。そのため、日常的に歯周病の予防を心がけること、また既に歯周病になっている場合は、その進行を止め、安定した歯周組織を維持することが重要です。
歯周病になっているかどうか、自分のお口の中の状態をチェックしてみましょう。
上記のうち、いずれかに該当する場合は、歯周病や歯肉炎のリスクがあります。早めに歯科医院での診断を受け、必要な治療を検討することをお勧めします。
これは歯周病の最も初期の段階で、炎症が歯茎に限定されており、まだ骨への損傷は起こっていません。歯周炎は、特に若者や子どもに見られる歯周病です。
■症状
歯茎の赤みや腫れ、ブラッシング時の出血などがあります。また、歯茎の粘膜が敏感になり、触れると痛みを感じることがあります。
■治療法
この段階では骨への影響はないため、適切な処置をすれば治すこともできます。一般的に、簡単な治療で改善することができます。
・ブラッシング指導
適切なブラッシング方法を指導します。正しい歯磨き方法を身につけることで、細菌の塊であるプラークを効率的に除去し、歯肉炎を治すことが可能です。
・スケーリング
歯に歯石が付着している場合は、専用の器具を用いて歯石を取り除くスケーリング処置を行います。
適切な対策を行わないと、歯肉炎は歯周病へと進行してしまいます。この段階では、歯茎の腫れが続き、歯と歯茎の間の溝が深くなり、歯周病原菌が蓄積しやすくなります。これが原因で、歯を支える骨の溶解が始まります。
■症状
歯茎は赤みと腫れの症状が現れ、触れるだけで出血しやすくなります。骨の破壊により歯茎が後退し始め、冷たいものがしみる知覚過敏が発生したり、食べ物の挟まりやすさ、歯の長さが目立つようになるなどの症状が出ます。
■治療法
・ブラッシング指導
効果的な歯磨き方法を家庭で行えるよう、ブラッシングの指導を重点的に行います。
・スケーリング
歯ブラシだけでは除去できない歯石を、専門の機械や道具を使用して取り除きます。
・スケーリングとルートプレーニング
骨が溶けはじめ、歯周ポケット内に歯垢や歯石が蓄積している場合は、これらを専門の器具で丁寧に除去します。
この段階で歯周病はさらに悪化し、約半分の骨が失ってしまう可能性があります。
■症状
歯周ポケットの深さが増し、口臭が強くなる、膿が出る、歯が動くなどの症状が出始めます。
■治療法
・ブラッシング指導
患者様が家庭で効率的に歯を磨けるように、ブラッシング方法について指導します。これにより、治療の成果を高めることができます。
・スケーリング
歯ブラシだけでは取り除けない歯石を、専用機器や道具できちんと除去します。スケーリングによって歯茎が引き締まり、歯周ポケット内の歯石を除去しやすくなります。
・スケーリングとルートプレーニング
骨の損失が進み、歯周ポケットに歯垢や歯石が多く蓄積しているため、これらを専門の器具で細かく取り除きます。中等度歯周病の治療は、初期歯周病の治療に比べて、より時間と回数が必要になります。
進行した段階の歯周病では、周囲の骨の半分以上がなくなっている状態です。多くの患者様は、ご自身の歯に大きな問題となってから診療を受けることが多いです。
■症状
歯周ポケットは非常に深くなり、膿がたまり歯茎が大きく腫れることがあり、これが強い痛みの原因となります。また、歯の動揺が激しくなり、しっかりと物を噛むことが難しくなります。この状態が続くと、歯は自然と抜け落ちる可能性もあります。
■治療法
・ブラッシング指導
家庭でのブラッシング方法を向上させるための指導を行い、治療の効果を高めます。
・スケーリング
歯ブラシだけでは取り除けない歯石を専用の機器で除去します。スケーリングにより、歯茎が引き締まり、歯周ポケットからの歯石を除去しやすくなります。
・スケーリングとルートプレーニング
骨のさらなる損失とともに、歯周ポケットに蓄積された歯垢や歯石を専門の器具で細かく取り除きます。この処置は、初期や中等度の歯周病に比べて、より多くの時間と治療回数が必要です。
・歯周外科手術
歯周ポケットが深い場合、内部の歯垢や歯石を完全に除去することが困難になるため、汚染された歯茎の一部を切除し、ポケットを浅くする外科的処置が必要になることがあります。
・抜歯
最終段階の歯周病では、残すことが他の歯に害を及ぼす可能性があるため、抜歯を推奨することもあります。
早期発見と早期治療が鍵となる歯周病は、初期段階で対応すれば、比較的簡単な処置で治療完了が見込め、さらなる進行を止め、悪化を未然に防ぐことが可能です。進行してしまった場合の治療は困難となり、治すことも難しくなります。そのため、定期的に歯科医師の診断を受け、適切な対処をおこなうことが重要です。
さらに、歯周病治療後の口腔ケアも非常に重要です。治療完了後も、定期的に歯科検診を受け、専門的なクリーニングを通じて、健康な口内環境を維持することが、長期的な健康を保つ上で効果的です。健康な歯で一生を過ごすために、生涯を通じて歯周病の予防とケアに努めることが大切です。